Q.有価証券の取得に関する不随費用と取得関連費用の違いは?
- okaikeikochira
- 2021年7月14日
- 読了時間: 3分
A.付随費用に比べ、取得関連費用はより広い範囲の支出が含まれるものですが,試験上は,ほとんど同じものと考えていいでしょう。実務上も,改正前は取得関連費用を取得原価に含めることとなっていましたが,改正後は費用処理ですので,付随費用と取得関連費用の範囲を明確にする意義は乏しくなっているのかと思います。
(主要な取得関連費用については注記が必要ですが,金額で切ることができますし,損金にするか否かといった税務リスクも低くなっているのかと思います。)
(金融商品会計に関するQ&AQ15-2)
不随費用(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用)は、有価証券の取得価額に加算します。(法令119条1項1号)
取得関連費用は、発生した事業年度の費用として処理し、主要な取得関連費用の内容及び金額は注記することが求められています。(企業結合会計基準第26項,第49項(3)④)
取得関連費用とは、取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる費用をいい、基準上は,外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等とあります。例えば,証券会社に支払う購入手数料,名義書換料のような実際に購入した際に係る費用や,法務・税務・財務調査費用(いわゆるDD),M&Aアドバイザリー報酬,紹介料や謝礼金,交通費や通信費(実地調査や交渉で発生するもの)などの費用があります。
狭義の意味での取得関連費用は,前述の通り「取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる費用」なので実際の購入に掛ったと客観的に立証できる費用であり不随費用とほぼ同一の概念かと思いますが,広義では買収活動トータルで掛った費用でしょう。
買収は,A社,B社,C社といった候補企業を挙げ,最終的に1社に絞ることもあるでしょう。買収先を絞るにあたり,複数の候補企業のそれぞれに対し財務調査費用など支出があるでしょうが,改正前基準では買収の意思決定前の支出か意思決定後の支出かで資産計上が否認された裁決事例もあります。
(平成22年2月8日付国税不服審判所福岡支部裁決:TAINS FO-2-500)
この点、改正前基準では、取得原価に含められなかった取得関連費用は注記により開示することとされていましたので、注記上は広義の取得関連費用を開示することが有用であると考えられます。(企業結合会計基準49 項)。
連結子会社又は持分法適用会社に投資を行ったときには、投資時点では付随費用を除き取得価額と連結財務諸表上の投資の価額が一致しています。
しかし、不随費用がある場合には、連単で不一致となります。
個別上、子会社株式の取得原価に含まれている付随費用(取得原価に含まれている取得関連費用も同様。)は、連結上、連結修正手続により費用処理します。連結修正仕訳により、取得原価に含めた金額を費用に振り替えたうえで、投資と資本の相殺消去をすることになると考えられます。
(連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針29-3付随費用と子会社への投資に係る一時差異)
コメント