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Q.任意積立金の積立と取崩の仕組みとは?

更新日:2021年6月24日

(2021/4/2更新)



Q.任意積立金を取崩す際に、繰越利益剰余金に振替えるのはなぜ?

Q.利益剰余金から任意積立金に振替えることによってどのような効果があるのか?


これらの質問に回答致します。

なお、私見が含まれている点、ご了承ください。

A.毎期,稼いだPL当期純利益はBS繰越利益剰余金に計上されていきます。

繰越利益剰余金を内部留保として蓄えておくこともありますが,繰越利益剰余金から配当をすることもあります。 幾ら分を内部留保とするか,配当に回すかについては,必ずしも会社経営者の意思だけで決められる訳ではなく,株主総会の承認が必要になります。 したがって,繰越利益剰余金のままですと,株主の意向によっては配当により会社財産が社外に流出してしまう可能性があります。 ではここで,会社経営者が将来の何かしらの支出に備え会社財産を確保しておきたいと考えているとします。 その場合には,株主総会の承認を経て,実際に該当の支出が行われるまで,配当できないよう,繰越利益剰余金勘定から任意積立金勘定に振替えることができます(任意積立金の積立て)。繰越利益剰余金勘定を任意積立金勘定に振替えることによって,配当により会社財産が社外に流出することを防ぐ効果があります。 そして,将来において該当の支出をし,積立ての目的を達成した場合には,もはや会社財産を拘束しておく必要がなくなるので,任意積立金を取崩し,繰越利益剰余金に戻します(任意積立金の取崩し)。その結果,一旦任意積立金に振替わっていた繰越利益剰余金ですが,再び繰越利益剰余金に戻り,以降は株主総会の承認を経て配当を行うことができるようになります。 目的を達成したのであれば,その後は会社財産を確保する必要は無く配当してもよいため,再び繰越利益剰余金に戻しているのです。 では,数値を交え見ていきましょう。(任意積立金のうち,新築積立金で解説します。) 例えば,期首に1,000円の現金出資を受け新規設立した会社(以下,当社)があったとします。 仕訳と設立時点のBSは以下です。 (借)現金1,000/(貸)資本金1,000


期中に現金仕入1,000円,現金売上1,200円を行ったとします。

(借)仕入1,000/(貸)現金1,000

(借)現金1,200/(貸)売上1,200

その結果,当期のBSは以下のようになります。(便宜上,現金勘定を1,000円と200円に分けています。)


今回のケースだと,当期純利益200円分の現金200円が増えていますね。このように,繰越利益剰余金がBSの貸方に計上されているということは,借方にもそれに見合う会社財産が計上されていることになります。

(なお,実際の企業のBSでは,掛取引を行っていたり,稼いだ利益をもとに設備投資するなど,様々な取引を行っています。そのため,繰越利益剰余金に見合う会社財産が何なのか特定することは難しいです。)

繰越利益剰余金は配当可能であり,繰越利益剰余金200円に見合う現金も手元にあるので,当社は当期末時点で200円全額を現金配当に回すこともできます。

仮に全てを現金配当した場合には以下の仕訳を行います。(便宜上,未払配当金,配当時の準備金の積み立ての仕訳は割愛します。)

(借)繰越利益剰余金200/(貸)現金200


ただし,当社は当期稼いだ200円分を,(配当するのではなく)将来の建物購入のために社内に蓄えておきたいと考えています。

特段何も処理しなければ,当期稼いだ200円全てが配当に回ってしまう可能性があります。(いわゆる「物言う株主」から配当してくれという強い圧力を受けることもあります。)

ここで,株主総会の承認を経ることで,配当可能な「繰越利益剰余金」から自由に配当できない「任意積立金」に振替えることができます。

(借)繰越利益剰余金200/(貸)任意積立金200

そうするとBSは以下のようになります。




200円部分については,積立前は繰越利益剰余金に計上され配当可能でしたが,積立後は自由に配当ができない任意積立金勘定になっています。(任意積立金をその積立の目的以外で取崩す場合には決議が必要となります。)

このように,任意積立金を計上することで,任意積立金額に見合う会社財産(今回は現金200円)が社内に拘束されるようになりました。


翌期になり,当社は,手元現金1,200円で建物を購入したとします。

(借)建物1,200/(貸)現金1,200


積立ての目的である建物購入の支出は完了し,もう会社財産を拘束する必要はありませんし,以降は配当により会社財産が社外に流出してしまってもいいわけです。

ですので,任意積立金を減らすとともに,繰越利益剰余金に戻します。

(借)新築積立金200/(貸)繰越利益剰余金200

BSは以下のようになります。




以上のように,再び200円が配当可能な繰越利益剰余金に振り替わりました。

ただし,着目して頂きたいのは繰越利益剰余金に見合う会社財産が,建物200円に振り替わっている点です。つまり,当社はすぐには配当することができません。

(仮に現金配当を行うためには,建物の使用を通じて収益を獲得していき将来的に現金を獲得する,或いは建物自体を売却により現金化して配当を行うということが考えられます。)


このように,将来何かしらの支出に備えたいと考えている場合には,任意積立金を積立てることによって,配当で会社財産が流出してしまうことを防ぎ,積立ての目的を達成することができるのです。

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